(糸崎公朗 ＜路上ネイチャー協会＞より 2012 年)
当館は、写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘し、新しい創造活動の場となるよう、様々な事業を展開しています。その中核となるのが、毎年異なるテーマを決めて開催している「日本の新進作家」展です。シリーズ第12回目となる本展は「路上から世界を変えていく」をテーマとして、世界と向かい合う行為を象徴する「路上」という場所に焦点をあて、2010年代日本の新たな視点や表現を切り開く写真家たちをとりあげていきます。
写真の歴史上、多くの写真家たちが「路上」を舞台としてストリート写真という形で優れた作品を生み出してきました。「路上」は現実と対峙する場であり、偶然性や思いがけない出会いの場として、様々な芸術家たちを魅了してきました。
「路上から世界を変えていく」。本展の出品作家たちは、たんに路上で撮影をするだけではなく、「路上」という日常の場所から出発して、今という時代についての考察を行い、自身の立ち位置を模索し、視覚作品という形で、見るものの世界観やものの見方、感じ方を変えていくような意志と契機をはらんだ創作行為を行っています。「路上」というキーワードから現代作家たちをとりあげることで、現代写真表現と過去の写真／美術の歴史との間のつながりや隔たりを浮き彫りにし、この時代の空気感や意識の在り様を顕在化させることが本展の大きな狙いのひとつとなります。
津田隆志 《site》より 2012年
For this exhibition, the twelfth of the series, the theme is “the street.” The focus is on the place we know as “on the street,” a place where we come into contact with the world. The theme is taken up by a group of contemporary artists in Japan exploring new perspectives and forms of creative expression in the current decade.
Photographers throughout the history of the medium have produced many outstanding images from “the street.” This is place where we come face-to-face with reality, a place of unexpected encounters and discoveries, and it has enchanted many an artist. The artists showing their work in this exhibition do not just take photographs of the street. With the everyday environment we call “the street” as their point of departure, they consider today’s world and explore their own position in it and then through their creative endeavors, attempt to change the worldview. By introducing contemporary artists via the key phrase “on the street,” this exhibition attempts to give visual form to the atmosphere and the sensibilities of the world today.