THRESHOLD BY MIHOKO OGAKI

1996年からドイツ国立デュッセルドルフ・クンストアカデミーに留学、2004年に同大学を卒業し14年間ドイツで活動した後、2010年にその拠点を日本に移したアーティストの大垣美穂子。

これまでデュッセルドルフ、ニューヨーク、京都、東京など国内外にて数多くの展覧会を開催。2003年、ノルトライン・ヴェストファーレン州のミュージアム・バーデンで行われた展覧会「57回 ベルギッシェ・クンスト・アウスステールング」では、オーディエンス賞を受賞し国内外の個人コレクターに多数所蔵されている。

THRESHOLD BY MIHOKO OGAKI ©︎ Mihoko Ogaki “Milky Way – Threshold 01” / 2017 / FRP, LED, Dimmer, Wood / 168 x 70 x 70 cm / Courtesy of KEN NAKAHASHI

くも膜下出血と診断され闘病期間を経て病を克服した大垣は、一層深く生そのものに沈潜し、また生そのものに生きる途を見出す手段として死を見んとする詳細な反省の繰り返しの中で、立体、インスタレーション、ドローイング、映像、パフォーマンスなど多岐にわたるメディアを用いて、「死」や「老い」に対する畏怖と崇敬を具現化した作品を発表してきた。銀河のような光を放つ年老いた人物をかたどった立体《Milky Way》シリーズ、メルセデス・ベンツを解体 そして無数のビーズで装飾し、その内部に鑑賞者が「死体」として身を横たえる宮型霊柩車を模った《before the beginning – after the end》、自身の身体をモチーフに「生きていることの実感」と「死を思う こと(メメントモリ)」の確認作業とも言える無数の点で描かれたドローイング作品《Star Tale》シリーズなど、死や老いといった概念を表現したそれらの作品はダイナミックかつ壮麗。

大垣の身体性をもって制作した、無数の穴やビーズ、光などの集合体で構成されるそれらの作品は、人々の多次元にわたる数え切れない集合意識の渦となって空間に立ち上がる。「最初粘土で型を作ってから、石膏型をとってFRPや紙で作るのですが、型をとっていくとだんだん最初に作った像と異なって、歪みが出てくる。しかし、その歪みが、まさしく老人じゃないと出ない歪みだったりする。立体を作っている時の偶然の歪みが、自分が頭で考えて作る歪みよりもリアルだ。」と制作過程について大垣は語っていた。

これまで発表してきた《Milky Way》シリーズは、座っていたり、寝転んでいる年老いた人間の身体がモチーフとなっていたが、「死を目の前に向かう新境地。物事の開始点」を意味する「Threshold」 と題された本展新作は、腰を曲げつつも立ち上がり、前に進もうとする立像となっている。

THRESHOLD BY MIHOKO OGAKI
会期:2017年3月31日〜4月29日
時間:13:00 – 21:00
休廊:日・月
会場:KEN NAKAHASHI
住所:東京都新宿区新宿3-1-32 新宿ビル2号館 5階